NBN通信10号ー3

                                  トップへ

   〜〜〜 NBNから報告です 〜〜〜

     聞いて、触って、美術館

 4月11日、NBNの皆さんと、岐阜県美術館にいきました。

 元来、美術を鑑賞するなどという感性など、まるで持ち合わせない上に、美術館には、私たち視覚障害者が鑑賞できる作品が少ないという固定観念もあって(事実そうなのですが)美術館に行くなどということは、めったにありません。しかしいくつかの彫刻に触ることができるということ。また、点字の資料もあり、美術館のギャラリー解説員の方が、お話しを通じて所蔵作品の解説をしていただけるということで、日頃は縁遠いところへ出かけることにしたのです。

 岐阜県美術館は、西岐阜駅から歩いて20分ほどのところにありました。当日は天気もよく、ガイドさんもたくさんいらっしゃるので、駅から美術館までは、ピクニック気分で歩きましたが、館内に入ると、なにか格調高い空間にいるような気がして、おちつかない気分になりました。ホールで美術館や、所蔵作品について、ひととおりの説明を受けたあと、グループに別れて美術鑑賞ということになりました。

 まず触ったのは、「マリア・バルダッサーレ」という女性のブロンズ像でした。

 触覚というのは、私たちにとっては重要な感覚なのですが、全体像、とくに大きなものの全体の形を知るのが難しいのです。彫刻などの芸術作品は、実際のものとは、かなり違った形をしている場合も多く、いくら時間をかけて自由に触りまくっても、なかなか、全体像をつかむことはできません。しかし、あらかじめ、「胸から頭部を模った女性の像」などと、説明を受けてから触ってみると、「これが頭で、これが頸」などと、触りながら確認することができました。美術館のギャラリー解説員の方の説明は実に的確で、その説明をききながら作品を撫で回していると、「大きな女だ」とか、「頸が長い」などとわかり、楽しくなってくるから不思議です。

 作者がなにを表現しようとしているかなどという格調高いことは、私にはまるでわかりませんでしたが、ただの模型を触っているのとは違っていました。

 次に触ったのが、「大きなケンタウロスの肖像」でした。私は、目がみえないのに、星のことが好きで、ケンタウロスが、上が人間で、下が馬の怪物であることも、ケンタウロス座には、地球に一番近い恒星(アルファー星)があることも知ってはいたのですが、もちろん、ケンタウロスの像に触るのは始めてでした。この作品は上半身だけなので、人物像といってもいいようですが、男性であることや、若く逞しい体であることが、触っていてわかりました。体の部分によって、ブロンズの手触りが違うのにも興味を持ちました。

 あちこち、触っているうちに、こういう作品をどうやって作るのだろうということを考えてしまいました。一度実際に作っているところをみてみたいような・・・。

 そのほか、色々な作品に触りました。なんの形かまったくわからない抽象的な作品や人間とフクロウが合体した像など。現実離れしているので、触っていても想像をたくましくすることができました。

 絵画や触れることのできない彫刻についても丁寧な説明をしていただきました。美術館の方だけでなく、作品を見た晴眼者の方が思わずもらす、その方なりの感想をきくのも参考になりました。美術館、けっこう楽しいところですね。

 晴眼者の方は、視覚障害者と美術館へ行ったときには、作品を見た自分の感想をどんどんもらして下さい。「わー、きれいだ」とか、「つまらない絵だこと」だとか、正直な実感を口から出して下さればうれしいですね。

                          名視協・鈴木芳夫

トップへ