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漢点字の創案

 昭和44年7月17日、元大阪府立盲学校教諭、川上泰一氏によって、漢点字が創案されました。

 漢点字は8点式なので、一般に使われている点字器や点字タイプライターでは書くことができません。そこで、元長野盲教諭の寺島計治氏が8点点字を書くことができるタイプライターを開発しました。

 漢点字を創案した川上氏が理科の先生で、タイプライターを開発した寺島氏が国語の先生だったというのはとても興味深い話です。お二人とも、視覚障害者に対する漢字教育への熱意は相当なものだったのでしょう。

 川上氏は、農学校と盲学校を聞き違えて盲学校に赴任されたそうです。川上氏が盲学校で教鞭を取ってらっしゃらなかったら、漢点字は生まれていなかったと思います。

 漢点字を創案するに当たって川上氏は、当用漢字(現在は常用漢字)はもちろんのこと、鍼灸マッサージに必要な医学用語や経穴(つぼ)の漢字は必須と考えました。

 また、偏と旁、冠と足という形を重視しながら作られていて、晴眼者と漢字の説明をしあうときにもすぐに字形が思い浮かびます。

 「漢点字は8点だから読みにくいのでは?」という声も耳にしますが、本体はかな点字と同様6点で、その位置の文字が漢字であることを示すための点を上につけます。

●●
○○ かな点字の「う」
○○
に漢点字符号をつけると
●●
●●
○○ 家
○○
という漢点字になります。

○●
●○ かな点字の「こ」
○●
に漢点字符号をつけると
●●
○●
●○ 子
○●
になります。

「字」という漢字は

●○ ○●
●● ○●
○○ ●○
○○ ○●
になります。

●○
●○ かな点字の「き」
○●
に漢点字符号をつけると

●●
●○ 木
●○
○●
になります。

●○
●○ かなの「き」
○●
を二つ並べて漢点字符号をつけると

●○ ○●
●○ ●○
●○ ●○ 林
○● ○●
になります。
さらに

●○
●○ かな点字の「き」
○●

●●
○○ 「3」から数符を取ったもの
○○
に漢点字符号をつけると

●○ ○●
●○ ●●
●○ ○○ 森
○● ○○
になります。木が三つだから「森」というように漢点字を校正しています。

 漢字も段々略字化されてきていますが、漢点字は漢字の略字の集約と言えるかもしれません。

●●
●●
●○ 言
○○
という漢点字と

●●
○○
●● 心
○●
という漢点字を組み合わせ

●○ ○●
●● ○○
●○ ●● 恋
○○ ○●
という漢点字を構成します。

漢点字について詳しく知りたい方は

 漢点字を読み書きする視覚障害者と、漢点訳をするボランティアの間で情報交換する場として、漢点字メーリングリスト があります。

また、tenjtext10は、かなやローマ字から漢字変換した文字を漢点字パターンとして表示してくれますので、漢点字の構成を理解するのに便利です。このソフトは、晴眼者が画面で漢点字パターンを確認できるだけでなく、視覚障害者もピンディスプレーに漢点字を出力させて漢点字の学習をすることができます。「TenjText10.exe」は自己解凍ファイルになっていますので、適当なフォルダに解凍してお使い下さい。

漢点字データの配布について

2001年4月、新著作権法が施行されて、「点字の文書」の中に、従来のハード・コピー(紙に打ち出された文書)に加えて、「点字の電子データ」が含まれるようになりました。このことは、ハード・コピーと同様、電子データでも、著作権者の許諾を得ることなく、点訳することができ、ハード・コピー・電子データ何れもを、許諾なしに配布することができることを意味します。

 これは、コンピューターの目覚ましい普及と、それに伴って通信の質が変化し、拡大したことを受けて行われたものです。すなわち、点字の世界でも、小規模な点字のハード・コピーは、製版・印刷されるのでなく、コンピューターから点字符号の電子データを、点字プリンターに送って打ち出すということが一般化したことと、その電子データを応用して、ピンディスプレイに、点字を表示させることが一般化し普及したことによります。

現在、漢点字訳ソフトとしては横浜漢点字羽化の会のEIBRKWと、村尾電子漢点字編集システム「OP-X」があります。元の漢字かな交じりのテキストには戻すことができない、著作権を保護した漢点字データ(拡張子bmt)を作成できます。

サピエ図書館及び名古屋点訳ネットワークのデータベースでは、著作権を保護した漢点字データの登録、検索・ダウンロードができます。


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