N B N 通 信 39 号

名古屋点訳ネットワーク
2019年12月発行







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NBN点訳勉強会のご報告

「触ってわかりやすい点字のために〜点訳の際の配慮や工夫」



◆ 編 集 後 記 ◆






NBN点訳勉強会のご報告

「触ってわかりやすい点字のために〜点訳の際の配慮や工夫」

講師  坂井仁美 先生(全国高等学校長協会入試点訳事業部)



 12月1日、名古屋市総合社会福祉会館において坂井仁美先生を招き、点訳勉強会を開きました。
 坂井先生は名古屋盲学校、岡崎盲学校に国語科教員として勤務された後、 現在は全国高等学校長協会入試点訳事業部と名古屋盲学校で活躍されています。
 また、現行の文科省著作点字教科書、小学部国語・道徳、中学部国語・道徳の編集主査もなさっていて 、点字利用者が晴眼者とハンデなく教科書や試験問題を理解できるかに日々取り組んでいらっしゃいます。
坂井先生
 まず、私たちが日ごろ目にする点字について疑問を投げかけてくださいました。
 私たちが目にする、ということは「見てわかる場所に点字がある」と言うことで、実はそれが触ってわかりやすい場所にあるのとは違うということです。いろいろな実例をお聞きしました。

 身体的に触りにくい場所にある、金属板のせいで夏は熱くなるなど、点字があるのに利用しにくい例に対して、新幹線のデッキの手すりにある点字は目にはつかなくても触って気が付きやすい場所に設置してあるという 利用者に配慮した例もお聞きしました。

 次に試験問題についてお話しいただきました。
 最近の試験問題は視覚情報を交えた出題が多いので、そのまま点字問題としては成立せず、制限時間内に問題を理解し解答するためには点訳者の様々な配慮が必要となるとのことです。

 そこで点訳の際どう配慮すれば、晴眼者と同様に短時間で問題を把握して解答へ導けるのかを具体的な問題例を基にご教授いただきました。
 点字の触読では情報取得の時間に差がでます。受験者のストレスを軽減し、受験者が実力を発揮できるには以下のような配慮が必要となります。

  1. 最初に全体の構成を伝える。
  2. ガイド線、大判点字紙、傍線や空欄の説明の工夫や選択肢のレイアウトなどを使用して検索性を高める。
  3. 問題を解く道筋に合わせて注記符の位置や点訳順序・形式を変更する。
  4. 解答用紙の情報を付け加える工夫する。
  5. 問題の図や表が本当に必要かどうかを見定める。
  6. 点字で学習する生徒の情報取得や生活経験に配慮する。
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以上の配慮に基づいて、問題を点訳する際に最も大切なことは「問題の形にとらわれず、問題の趣旨が同様で、点字で取り組みやすくする」ことだと教えていただきました。

 また、教科書点訳についてもお話しいただきました。
 点字教科書を編集する方針は文部科学省のホームページに公開されています。
 最近の教科書はご存知の通りビジュアル化が進んでいるので編集資料が増えているそうです。
 実例を確認しながら実際にグループワークを通して教科書点訳について考えました。

 あくまでも表記法で許される範囲でとのことですが、ナンバリングや分かち書きで分かりやすくする、題材とされている絵の扱い方について提示する位置や内容を工夫したりするなどで点字でも内容がわかるように編集しなければなりません。


 最後に心温まるエピソードをお聞きしました。
 授業中に点字を打っている生徒が、先生が読みやすいように点字盤の定規をずらして読ませてくれたそうです。お互いにそれぞれの視点を理解し思いやる、このことは障がいをお持ちの方とだけのコミュニケーションではなく、誰に対しても人間として本当に必要なことだと思います。

 「原文通り」ということに縛られがちな点訳ですが、坂井先生のお話をお聞きし、その点訳を必要とする方が、いかに晴眼者と同様の理解を晴眼者に近い時間でできるかにフォーカスする必要なものもあり、そのためには編集の工夫の知識が必要なことがわかりました。
 必要な方へ必要な情報を届ける点訳の奥深さとやりがいを感じました。




◆ 編集後記 ◆ 

「百聞は一見にしかず」と言います。これは視覚障がいの方にとってトラウマとなる言葉かもしれません。
わたしたち点訳者やガイドは、どうしたら「一見」を何とか「十聞」くらいで説明できるだろうかといつも頭を悩ませていますが、坂井先生からそのヒントを頂いたように思います。
目の前の出来事を同じように理解し感動する自由を共有したいと思う点訳者やガイドが、情報提供の公正性・公平性を実現できるのではないでしょうか。
広報 浅田浩子






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