NBN通信7−1
   《充実してました! ―
 NBN主催 講演会&交流会》
去る11月3日、市総合福祉会館6階にて、視覚障碍者支援協会(BBA)会長:浦口明徳氏をお招きし、講演会及び交流会が開かれました。視覚に障碍のある方の参加も含め45名という多数の参加者を得、大変実り多い会となりました。少し長くなりますが、以下に当日の講演内容や、会の様子について、報告させていただきます。
浦口明徳氏
《講演会》

 まず午前中は、浦口氏に「『新表記と点訳』を考えての将来」と題して、ご講演いただきました。 浦口氏は、24才というお若い頃から点訳を始められ、多くの点訳サークルを創設してボランティアの裾野を広げられると共に、全国に先がけてコンピューターを使った点訳に取り組み、パソコン点訳と点字プリンターの普及に尽力された方です。又、現在は弱視者のための拡大写本を手がけられ、こちらでも、コンピューターを使った拡大写本推進。まさに視覚障碍者の読書支援の世界では時代を先取りし、常に新しい分野を開拓してこられた方といえます。
 さて、講演内容ですが、まず「日本点字表記法の改訂」について、「これは日本点字委員会が表記を決めた後に、全国のボランティアにその表記が徹底されるよう教育する余裕がないため、10年ごとにその時々の点訳者が使っている実際の表記に合わせて改訂していく、つまり表記を多数決で決めていくことに大きな原因がある」とのお話があり、更に、ボランティアの意見を聞く場を設けてはいるものの、決定権を持つ委員に「ボランティアの代表が入っていない」という矛盾も指摘されました。  
 「そもそも点字は、〈盲人自身の文字としての点字〉 ― 創られた頃の原則は、発音どおりだった ― と、〈点訳者用の点字〉 ― 墨字に準じる、翻訳的点字 ― という2種類あって、別ものと考えるべきなのに、それが混乱しているのが現状である」と、点字・点訳をめぐる一番の問題点を指摘されました。
 そして〈盲人自身の文字としての点字〉については、盲人の書き易いものであるべきだし、その表現の自由が尊重されねばならないはずだ」ということと、「視覚障碍者からの注文によって点訳がなされる場合、その点訳は注文者の希望に沿ったものであるべきだ」とも、お話になりました。
 一方「見込み生産として、ボランティアの方で何らかの文を点訳する場合は、もちろん〈点訳者用の点字〉を使うことになるが、その大原則は、“原本にあるものを見たとおり、できる限り忠実に訳す”ということで、まず原本を間違いなく正しく読み、著者の表現のクセなども大切に点訳化する必要がある。しかし、マス空けについて、盲人はどんな点字でも読め、さほど気にしていないのであまり厳しく考えない方がよい。」とのこと。
 更に「そういう意味で、表記については表記法が改訂されても点訳者自身にまかされていると考えてもよいのだが、やるたびに違うとか同じサークルなのに人によって違うというのでは困るので、点訳者自身、そして少なくともサークル内は統一した点訳方針というものが必要になってくるだろう」とのお話でした。
 このように、表記法が改訂され、少なからず迷いや混乱を感じていた私たちボランティアにとって、浦口氏の講演は、それをどうとらえ、これからどうしていくべきかについて、確固たる基本姿勢を示して下さるものであったように思います。
 その他、「分かちについて、“文脈判断”ということが言われ、そこが一番悩むところで、つい点字表記辞典で結論だけを求めてしまうが、文脈判断で結局一番頼りになるのは国語辞典(とくに、三省堂の『新明解国語辞典』が浦口氏のお勧め)だ」ということや、「点字図書館の蔵書作りから始まった点訳の歴史について」、「音訳と点訳の意外なつながり」など、さすが点訳について造詣の深い浦口氏、点訳について多岐に渡るお話をうかがうことがでしました。

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