NBN通信11号ー3
〜〜〜 NBNから報告です 〜〜〜
触図作成講習会
平成16年11月21日(日)午前10時から午後3時30分まで、北区生涯学習センターにて、触図作成講習会が行われました。
はじめに、NBN代表中西さんのあいさつ。続いて、今回の講習会を開催するに当たって、いろいろとお骨折りいただいた、名古屋盲学校の細川先生(NBN副代表)に、司会を担当していただき、講師の紹介をしていただきました。
講師:前田先生(岡崎盲学校で理科を教えていらっしゃいます。10数年触図に携わり、いろいろなボランティア活動をされているそうです)
スタッフ:細川先生(名古屋盲学校)
奥田先生(名古屋盲学校)
金丸先生(岡崎盲学校)
諸先生方には、当日使用する、触図体験や作成に必要な資料・プリンターなどの機材一式をご用意していただきました。
午前:作図に関する説明
1 作図作成のポイント
(1) 何を伝えるのかを明確にする
触図とは、目の不自由な方が指先で触って把握するために作成された図です。
「何を伝える図なのか」を明確にすることがスタートです。
(2) 触知覚認知特性に配慮する
手で触れて認識するには、「細かなもの」「広範囲の把握」は困難なため、読み取りやすいように工夫する。
上記のことを体験するため、2名1組になり演習を行いました。
@ 接近した「2つの点」が離れていると認識できる距離
A 接近した「2本の実線(平行)」が離れていると認識できる距離
B 「波線」だと認識できる波線の間隔
C ○△□×の形が認識できる大きさ
D 1つの枠の中にある、○と△の数を数える
[結果]
認識するためには、@は2ミリの間隔、Aは3ミリの間隔が必要だと言う人が多かった。
Bは2〜3ミリの間隔で認識できると答えた人が多かったが、Cも含めて、個人差があり、触図を利用する人との相談が必要になってくるということでした。
Dは形の認識や位置の配置関係が難しく大変な作業だった。
形の認識は、○が一番わかりやすく、続いて△で、原図が複雑な形の場合は、○や△に置き換えるほうが利用しやすい。
また、課題と課題の仕切り線など、必要のない情報は、省略・簡略化し、伝えたいものを強調する。どういう情報を伝えたいか、よく考えることが必要である。
以上のことから、見るのと触れるのとでは、大きな差があり、触れて認識するには、時間がかかる。分かりやすく情報を伝達するためには、いろいろな配慮が必要だということを体験によって確認できました。
午後:エーデルによる作図と、立体コピーによる作図
昼食後、エーデルによる作図、立体コピーによる作図、どちらか希望する方法に分かれて、各自、実際に作成しました。
立体コピーの作成方法は、まず原図を触って分かりやすい図に編集します。これをコピー機を用いて、カプセルペーパーという発泡剤が塗布されている特殊な用紙にコピーします。最後に、熱照射器で熱を加えると、コピーした黒い部分が膨らみ、触図となります。膨らみ具合に差があるため、細かいものの描写には適しません。
エーデルはパソコンで作図するフリーソフトの名称です。大中小の3種類の点を描くことが出来、ESA−721などの点字プリンターで印刷できます。
作成後、細川先生、盲人文化センターの奥野さんにも、ご協力いただいて、実際に触れてみた感想や意見などを伺いました。
最後は、まとめとして、希望者が前に出て、自分の作品を発表していただき、苦労した点、こうすればよかったなど、質問や意見の交換の場となりました。
[まとめの内容]
エーデルの場合は、画面と実際に印刷したものは、「点の大きさ」や「点と点との間隔」が、イメージと違うので、いろいろなサンプルを作っておいて、参考にするとよい。
立体コピーの場合は、線を太く濃く描いた方が分かりやすい。
遠近感がある場合は、正面・横・上・下からなど角度を変えて、いくつか作成すると分かりやすい。
綴じ方によって、ページ数や図の番号、図の向きを考慮する。
図の説明や名称を図の中に描く場合、位置によって、図が分からなくなるので、文字の入れ方を考える。また、図の中に描くのではなく、凡例として、初めの部分に示すことも有効。
テープ・シールなどを使用して、素材を変えることも触覚に変化を与えるので有効。
1次・2次関数のグラフは、x・y軸との差を付けるため、線の太さや、種類を工夫する。
輪郭があるものは、途中で区切らないのが基本。図の説明・種類・番号などを入れる場合は、別のところに描く。
複数のグラフが一体になっている場合は、1つずつのグラフに分けて描く。
図を分割して描く場合は、あまりたくさんのページにまたがると認識しにくくなるので、3ページくらいが適当である。
建物などの場合は、各フロアを別々に描く。分かりやすい記号(階段・エスカレーターなど)や、省略できるもの(例えば、エレベータを「エレ」というように)を考える。また、記号の説明などは別紙に記載する。
最後に、講師の前田先生は、「絵であっても、言葉で分かるものは、『文字』を使った方が伝わりやすいが、最近は、絵でなくては伝わらない情報も多くあります。今後、わかりやすい触図に興味を持って、続けていただきたい」と締めくくられました。
[感想]
この日は、40名を超えるたくさんの方に集まっていただきました。
笑顔の優しい、講師の前田先生の、分かりやすい、工夫を凝らした講義や資料に、皆さん真剣に取り組み、何よりいろいろな体験ができたのが、とても参考になりました。
帰る際には、皆さん口々に「よかった」「もっともっと勉強が必要ね」「楽しかったね」とおっしゃって、大変有意義な1日になりました。
触図の作成に当たって、観るのと触れるのとでは大変な違いがあり、あまり省略しすぎても、あまり丁寧すぎても、伝えたい情報が正しく伝わらないことが、体験によってよく分かりました。作成する前に、いろいろな角度からの資料を集め、構想を練り、イメージを膨らませ、計画を立てることが大切だと思いました。そして、何より触図をたくさん作って、経験を積むことが必要だと思いました。
また、機会があったら作ってみたいと思いました。
前田先生はじめ、諸先生方、ありがとうございました。
そして、参加された皆様お疲れ様でした。
ブレイルなかがわ 片岡由美子
追記
「触図はおもしろそうだけどプリンターがないから作れないわ」という声がありました。大樹会でESA−721を持っているので、打ち出しをお手伝いできます。ご希望の方は中西HAG05630@nifty.comまでエーデルデータをメールしていただけば、プリントアウトして郵送します。遠慮なくお申し出下さい。
また、立体コピーは、原図を用意すれば、名古屋盲人情報文化センターで、1枚100円で作成してもらえるそうです。
この他、講習会ではあまり触れられませんでしたが、サーモフォームという作図方法もあります。サーモフォームとは、ボタンや紐などで切り貼りして作られた原画を専用のビニール・ペーパーに複写すると、熱によって原画の凹凸がコピーされるものです。よく地図などに利用します。この専用の用紙には大きさが2種類あります。
小:21.6×28.0cm 1枚35円
大:27.9×29.2cm 1枚38円
詳しくは名古屋盲人情報文化センターまでお問い合わせ下さい。
大樹会