土佐堀川 広岡浅子の生涯
豪商三井家から17歳で大坂の両替商・加島屋に嫁いだ浅子は、
家運が傾くと持ち前の商才を発揮、「九転十起」の精神で難局を切り開き、
大坂随一の実業家として大成する。
晩年は女子教育にも力を注ぎ、日本初の女子大学開設に奔走。
歴史に埋もれてきた不世出の女性実業家の生涯を、初めて世に紹介した名作が、
待望の文庫化。
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緋の天空
光明皇后、その生涯が鮮やかに蘇る渾身の歴史長編。
闇を払う光となれ。
父・藤原不比等の願いが込められたその名を胸に、一人の少女が歩みだす。
朝廷の権力争い、相次ぐ災害や疫病…。混迷を乗り越え、
夫・聖武天皇を支えて国と民を照らす大仏の建立を目指す。
主な登場人物
光明皇后 幼い頃より利発で美しく、首皇子(のちの聖武天皇)とは
兄弟姉妹のように育つ。
藤原不比等 朝廷第一の実力者。光明子の父。
県犬養三千代 聖武天皇の乳母。光明子の母。
聖武天皇 皇太子時代に光明子を妃とした。反乱や災害、疫病に見舞われ、苦難の治世となる。
膳夫 長屋王を父に持ち、首皇子の友として育つ。
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大久保利通の肖像 その生と死をめぐって
歴史上の人間には〈公〉と〈私〉があるのだが、
大久保に関しては〈公〉だけでも大変なのに、とても〈私〉までにはいきつかない。
〈公〉についての本は明治時代からは数々出ており、
それらによって世間でもかたい人物と見られることにもなる。
しかし大久保の〈私〉も、けっこうおもしろい。
〈公〉は専門書に任せるとして、本書は〈私〉を中心に人物を追ってみたい。
また、可能な限り出典を示して、史実は史実、解釈は解釈、論は論として書いていく。
そこから大久保利通の人間像に新たな光をあてることができれば、何よりである。
(「はじめに」より)
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孤宿の人 下
加賀様は悪霊だ。丸海に災厄を運んでくる。
妻子と側近を惨殺した咎で涸滝の屋敷に幽閉された加賀殿の祟りを領民は恐れていた。
井上家を出たほうは、引手見習いの宇佐と姉妹のように暮らしていた。
やがて、涸滝に下女として入ったほうは、頑なに心を閉ざす加賀殿と
いつしか気持ちを通わせていく。水面下では、藩の存亡を賭した秘策が粛々と進んでいた。
著者の時代小説最高峰、感涙の傑作。
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孤宿の人 上
北は瀬戸内海に面し、南は山々に囲まれた讃岐国・丸海藩。
江戸から金毘羅代参に連れ出された九歳のほうは、この地に捨て子同然置き去りにされた。
幸いにも、藩医を勤める井上家に引き取られるが、
今度はほうの面倒を見てくれた井上家の琴江が毒殺されてしまう。
折しも、流罪となった幕府要人・加賀殿が丸海藩へ入領しようとしていた。
やがて領内では、不審な毒死や謎めいた凶事が相次いだ。
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ぜひ宮部さんの名文といえる美しい文章で、丸海藩の生活を登場人物たち一人一人に
心を託して楽しんでいただきたい。(児玉清)
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