上野池之端 鱗や繁盛記
私は市井の作家である。
私の物語るところのものは、いつも私という小さな個人の歴史の範囲内にとどまる。
之をもどかしがり、或いは怠惰と罵り、或いは卑俗と嘲笑するひともあるかも知れないが、
しかし、後世に於いて、私たちのこの時代の思潮を探るに当り、所謂「歴史家」の書よりも、
私たちのいつも書いているような一個人の片々たる生活描写のほうが、たよりになる場合があるかも知れない。
(島内景二の推薦文の中より)
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シュンスケ!
初代内閣総理大臣、伊藤博文。幼名、俊輔。
周防国の百姓の家に生まれた彼は、武士に憧れ、無謀にも一国の宰相となることを夢見た。
幕末の動乱期を持ち前の明るさと好奇心で駆け抜ける俊輔に、
吉田松陰、高杉晋作、桂小五郎、坂本龍馬ら多くの志士たちは次第に魅了されていく。
英国に留学し、早くに世界へ目を向けた俊輔がたどり着く、あるべき「日本」の姿とは?
歴史小説の新鋭が送る、爽やかな一代記。解説・一坂太郎。
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罪の声
逃げ続けることが、人生だった。
家族に時効はない。今を生きる「子供たち」に昭和最大の未解決事件「グリ森」は影を落とす。
「これは、自分の声だ」
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。
ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。
テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。
それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声と
まったく同じものだった―。
講談社BOOK倶楽部より転載
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おれは清麿
「この刀はおれです。おれのこころです。
折れず、撓まず、どこまでも斬れる。そうありたいと願って鍛えたんだ」
信州小諸藩赤岩村に生まれた山浦正行、のちの源清麿は、九つ上の兄真雄の影響で作刀の道にのめりこむ。
隣村の長岡家に十八歳で婿に入るが、刀に対する熱情は妻子をおろそかにさせるほどたぎるのだった……。
幕末最後の天才刀鍛冶、その波乱の生涯を描く!
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愛しの座敷わらし
現代のごく普通のサラリーマン家族が突然転勤!
選んだ一戸建ての中古住宅…。
そこには?!…
それが現代人らしい冷えた家族間をどう変えていくか?
最近の刺激的なものが好まれがちな時代に、この物語は読者にどんな思いを残すでしょうか?
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井伊直虎 女にこそあれ次郎法師
数奇な運命である。
数奇な運命を生き抜いた一人の女と、その一族の物語である。
天文十三年(1544)十二月二十四日。
祐は九歳。許婚の亀之丞はおない年。その日を境に、ふたりの運命が激転した。
いや、彼らだけではない。井伊氏一族、家人郎党、民百姓。
遠江国、浜名湖の北東に位置する井伊谷。北に南信濃の山垣が連なり、南に奥浜名が広がる。
西は、峠一つ越えれば三河。そして東は、大国駿河―。
その地に生きる者たちすべての運命が、その日から大きく動き出したのだ。
乱世である。裏切りと殺し合い、陰謀が渦巻く戦国の世。
荒々しい波飛沫が頭から叩きつけ、北に連なる山々から吹き下ろす烈風になぎ倒される。
弱ければ滅びる。強い者だけが生きのびる。
策謀にたけた者、逃げ足の速い者、そして、天が選びし者―。それだけだ。
それが、この世の掟である。
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ななもりやま動物園の奇跡
読んだ後、家族に電話したくなる。父と娘の優しい奇跡の物語。
妻が事故で逝った―。小さな不動産屋を営む幸一郎は、別居中だった妻を事故で亡くし、
高校生の一人娘・美嘉とは関係がうまくいっていない。
なんとか美嘉と仲直りしたい幸一郎だが、「母を死なせた」と美嘉は取り付く島もない。
そんな中、幸一郎は親子3人の思い出の動物園が、ほぼ閉園状態にあることを知る。
美嘉の笑顔を取り戻したい。幸一郎は何の知識もないまま、動物園の再建を決意する。
最初は誰にも相手にされない幸一郎だが、彼の熱意に次第に協力者が集まり始め―。
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無私の日本人
貧しい宿場町の行く末を心底から憂う商人・穀田屋十三郎が同志と出会い、
心願成就のためには自らの破産も一家離散も辞さない決意を固めた時、奇跡への道は開かれた
―無名の、ふつうの江戸人に宿っていた深い哲学と、中根東里、大田垣蓮月ら三人の生きざまを通して
「日本人の幸福」を発見した感動の傑作評伝。 解説・藤原正彦
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藍千堂菓子噺
両親亡き後、叔父に実家を追われた晴太郎と幸次郎。
兄弟は、かつて父の許で修業していた職人の茂市と一緒に、菓子司「藍千堂」を開く。
優しい職人肌の晴太郎と、しっかり者で商才に長けた幸次郎は、亡き父の教えを守りながら、
叔父の嫌がらせにも負けず、知恵と工夫を凝らした季節の菓子で店を切り盛りする。 解説・大矢博子
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中国歴史の旅 下
歴史上、つねに要害の地であった南京。水の都蘇州。中国近代史の中心上海。
古くから文明が栄えた杭州。洞庭湖をはさむ湖南、湖北。国際貿易港として福建。山水の町桂林。
中国の南の窓広州、バラエティに富んだ文明が重層して独特の文化を築いた中国の全体像を描く、
歴史と旅の長篇紀行文。
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中国歴史の旅 上
広大な大地と悠久の歴史をもつ中国。
あまりにも広大なゆえに風土も文化も一様ではなく、各地方はそれぞれ独特の[顔]をもっている。
人類発祥の謎を秘める周口店遺跡から近代史の生々しい痕跡を垣間みせる北京、
そして万里の長城、古都洛陽、西安、シルクロードと、中国の過去と現在を綴る歴史紀行。
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流れる星は生きている
昭和20年8月9日、ソ連参戦の夜、満州新京の観象台官舎―。
夫と引き裂かれた妻と愛児三人の、言葉に絶する脱出行がここから始まった。
敗戦下の悲運に耐えて生き抜いた一人の女性の、苦難と愛情の厳粛な記録。
戦後空前の大ベストセラーとなり、夫・新田次郎氏に作家として立つことを決心させた、
壮絶なノンフィクション。(中央公論 裏表紙より)
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村上海賊の娘(四)
難波海での睨み合いが終わる時、夜陰に浮かび上がったわずか五十艘の船団。
能島村上の娘、景の初陣である。
ここに木津川合戦の幕が切って落とされた! 煌めく白刃、上がる地飛沫。炸裂する村上海賊の秘術、焙烙玉。
真鍋家の船はたちまち炎に包まれる。門徒、海賊衆、泉州侍、そして景の運命は―。
乱世を思うさまに生きる者たちの合戦描写が、読者の圧倒的な支持を得た完結編。
(新潮文庫 裏表紙より)
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村上海賊の娘(三)
織田方の軍勢は木津砦に襲い掛かった。
雑賀党一千の銃口が轟然と火を吹き、その猛攻を食い止める。
本願寺門徒の反転攻勢を打ち砕いたのは、京より急襲した信長だった。
封鎖された難波海へ、ついに姿を現す毛利家と村上家の大船団。
村上海賊には、毛利も知らぬ恐るべき秘策があった。
自らの家を保つため、非情に徹し。死力を尽くして戦う男たち。
景の咆哮が天に響く―。波乱の第三巻。(新潮文庫 裏表紙より)
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村上海賊の娘(二)
天下統一に乗り出した織田信長が、大坂本願寺を攻め立てていた天正四年。
一向宗の門徒たちは籠城を余儀なくされていた。
海路からの支援を乞われた毛利家は、村上海賊に頼ろうとする。
織田方では、泉州淡輪の海賊、眞鍋家の若き当主、七五三兵衛が初の軍議に臨む。
武辺者揃いの泉州侍たち。大地を揺るがす「南無阿弥陀仏」の大合唱。
難波海で、景が見たものは―。激突の第二巻。(新潮文庫 裏表紙より)
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村上海賊の娘(一)
時は戦国。乱世にその名を轟かせた海賊衆がいた。村上海賊―。
瀬戸内海の島々に根を張り、強勢を誇る当主の村上武吉。
彼の剛勇と荒々しさを引き継いだのは、娘の景だった。
海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女。
この姫が合戦前夜の難波へ向かう時、物語の幕が開く―。
本屋大賞、吉川英治文学新人賞のダブル受賞!
木津川合戦の史実に基づく壮大な歴史巨編。(新潮文庫 裏表紙より)
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